メジャーアイドル楽曲部門
1位 HOMETENOBIRU / lyrical school :3pts.
valknee作詞。巧い/プロップスがある/強い/悪い/稼ぐ/モテる/盛り上げる、などセルフボーストバリエーションは多々あれど、マチズモの塊であるヒップホップ界においてフィメールラッパーが泥臭く戦ってきた過去を知るがゆえに、制作/プロデュース陣のヒップホップに対するリスペクトが崇ければ崇いほど、アイドルラッパーに「可愛い」だけで押し切るセルフボースト曲を書くのは難しかったはずだ。Maltineの現場で遊んで育ったデジタルネイティブ世代がiPhone片手に歴史を飛び越えていく、これは今のフィメールラッパーにしか書けない革命的な曲。リアルとフェイクの物差しから逃れるために、敢えての「B-GIRLじゃなくてI-D-O-L」宣言が必要だった時代はもう終わった。
2位 記憶 / イヤホンズ :2.5pts.
□□□三浦康嗣提供。高野麻里佳/高橋李依/長久友紀による声優ユニット。アルバム冒頭はナタリーのアルバムリリースインタビューの会話をカットアップした「記録」、そのまま街の背景音をクリップしたビートとポエトリーリーディング/ラップによる「記憶」へ繋がる。声優の声を歌を通して「歌」でなく「声」そのものとして最大限に引き出す、RYUTist「ALIVE」と対を成すカラフルな傑作。
3位 I see... / 乃木坂46 :2pts.
賀喜遥香センター、乃木坂4期生曲。林田健司/清水信之/小西貴雄/小森田実/CHOKKAKUらが作り上げたmid90sのSMAPディスコクラシック達を多分に意識した楽曲は、嵐仕事が豊富なyouth case作曲、佐々木博史編曲。まだ音楽業界がバブル景気の残り香を纏っていた頃のあの浮かれた空気、浮かれたステップ。都知事による外出自粛要請記者会見と同日に公開され、忘れてかけていたあの賑やかで華やかなカラ元気を緊急事態宣言下に振りまいた。アイドルにしかできないことは沢山ある。
4位 透明クリア / 福原遥 :1.5pts.
星野源「POP VIRUS」収録「サピエンス」にエグいベースラインを提供したSnail's House(Ujico*)作曲編曲。中田ヤスタカを飛び越えて世界に飛び出すデジタルネイティブ世代の「Kawaii Future Bass」と透明感ある女性とのコラボレーションの好例。
5位 トーキョー・イノベーター / CY8ER :1pts.
KOTONOHOUSE提供。全てを叶えてくれるはずだったインターネットは、いつしかSF作家の予言通りに市民自身による徹底した相互監視の目に形を変えた。現実とSNSに境目がなくなった息苦しい世界の中で、Soundcloudは新しい宗教を生み、根拠も自信も裏付けも無いままヤマハの歌姫は自由と希望と解放を能天気な言葉で高らかに謳う。ダンスカルチャーのオプティミズムは場を変え形を変えて継承されてゆく。「明日は明日の風が吹く」のバランス感覚の秀逸さ。
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