楽曲部門
1位 アドレナリン・ダメ / つばきファクトリー :3pts.
2022年は中島卓偉の年であった。少なくともつばきにおいては確実に。シンプルで強度の高いメロディがリフレインするファンキーなキラーチューン。前のめりなベースに急かされるように、12人の歌声を次々に畳み掛けていく曲調は、今年のつばきファクトリーの充実した活動ぶりを象徴するよう。我らが雨子先生の作詞も冴えに冴えており、ハイテンションを爆発させながら、ちゃんとしろと自分に言い聞かせる鮮やかなアンビバレンスは情緒が荒れがちなヲタクに真っ直ぐ突き刺さった。
2位 Sunset Summer Fever / L!PP (from Hello! Project Dance Team) :3pts.
うねるベース、粘るドラム、打ち込みビートが主流のハロプロにおいてもはや新鮮なリズムと、ごてごてしない爽やかなサウンドと展開。奥に情熱を秘めながらもサラリとして温度を感じないのは、これも儚く消える夏の夢だからだろうか。段原瑠々を加えて、歌唱面でも最強になったハロプロダンス学園は楽曲提供とボーカルディレクションを担当した西寺郷太氏を驚かせた。その中でも落ちサビ秋山眞緒パート「忘れられない 夏の痛みさ」の素晴らしさは筆舌に尽くし難い。彼女のもつシルキーかつキュートでイノセンスな歌声がとうとう本来の居場所をみつけたようだ。その魔性に身を焦がした2022年を私は忘れられないだろう。
3位 運命 CHACHACHACHA~N / OCHA NORMA :1.5pts.
(お茶の間)を楽しませる、新世代の(スタンダード)となるような存在になってほしい!という願いを込めて名付けられたOCHA NORMA。これまでお茶の間よりむしろ目の前のヲタクに向けられた「ハロプロっぽい」楽曲が続いたが、リリイベで踊り狂うお茶漬けヲタクの度肝を抜く奇怪な曲が爆誕した。ロカビリー、ワルツ、ラップ、コール&レスポンス、キュルルンビーム(?)、結婚式の誓約、と脈絡も節操もなく無理矢理に展開していく。バラバラの要素をつなぐのは運命、いやもう運命かどうかなんてどうでも良いのだ。「真実は No thank you 興味もありません」。この胸の高鳴り、アイドルの輝き、それだけが本物ならばよい。意図したものかは定かではないが、かつて日本に存在したお茶の間という共同幻想が崩壊し、バラバラに引き裂かれて混沌とした世界に生きるヲタクの刹那を描き出したポストモダンな問題作。
4位 Happy Days / 宮本佳林 :1.5pts.
演劇女子部「ミュージカル 恋するハローキティー」から8年、過剰なほどに表情豊かで、ずば抜けた輝きを放つ佳林ちゃんの歌声が進化してミュージカル調の楽曲に再会。佳林にHappy days、まるでピーナッツバターといちごジャム、まさに鬼に金棒、マンダのりゅうせいぐんはつよい。良曲揃いのアルバム中でもこの声の快楽は圧巻。これぞ多幸感。よく聞くと哀愁のある歌詞が佳林ちゃんらしくて憎い。
5位 Kitty / 小片リサ :1pts.
小片リサの角の丸いスムースな歌声はソロになってから磨きがかかっている。まるちゃんの愛称に違わず、まるい音の良さが尋常ではない。具体的にいえば「I’m your kitty」の「みゅ」の部分がエグい。あとはまるいの意味が違変わるが、「ちょっぴり」の「ぴ」もヤバい。痺れる。リサにこれを歌わせた作詞の勝利。あくまで媚びず品よく歌おうとも、溢れ出でくる色気は他に代え難い。ジャニーズやK-POPの錚々たる面々に楽曲を提供してきたKevin Chargeのエッジの聴いたサウンドもそれを良く補完し、極めて中毒性の高い楽曲に仕上がっている。
|