第17回ハロプロ楽曲大賞'18 >> 個人ページ 青島玄武

投票者情報


ニックネーム:青島玄武


サイト:カルバートン・スミスの告白


楽曲部門


1位 A gonna / モーニング娘。'18 :3pts.
  今回の楽曲大賞は本当に選べなかった。素晴らしい曲ぞろいだったから。今回のわたくしの選考は、断腸の思いですべてつんく♂作品に限らせていただいたのだが、それでも悩みに悩んだ。年を追うごとにつんく♂は老獪になっていく。ハロプロに曲を提供する作家は本当に多いが、彼らが100の力を振り絞っても、つんく♂の50の力が凌駕する。合気道家の老人が、若手の空手家の正拳突きを投げ飛ばしてしまうかの如くである。ともあれ、この曲。アメリカのヒットチャートを賑わせているトラップに乗せて、人間のあるべき姿を高らかに歌っていく。「A goona(えーがな)」が単なるダジャレでなく、「悩んどらんで、どうでもえーからはよ行け!」というメッセージであることも痛烈だ。ダンスも「A」ポーズとフォーメーションのくだらなさ(褒めてる)だけでなく、八戸の「えんぶり」や、アボリジニーの「ハカ」のように豪快な点にも注目すべき。
2位 自由な国だから / モーニング娘。'18 :2.5pts.
  つんく♂は必ず作品にその時々の現代社会を背景として忍び込ませることが少なからずあった。他のアイドルソングとの差はこれだ。『LOVEマシーン』には経済不況があり、『ザ・ピ~ス!』には911テロがあった。この曲ではアメリカのトランプ大統領の政策があると思われる。日本でも国民が政策に関心がない中、とんでもない改革法案が安倍首相と自民党の一部の議員の合意のもとするすると決まっていく。まさに自由が不自由になっていく瞬間だ。つんく♂はプラチナ期から書き続けている「束縛されない女」の肖像を、今ここでぶつけてきた。ここで描かれているのは、単にへなちょこ男からの束縛を嫌う女性ではない。人間の魂を鼓舞する、まさしく「自由の女神」の姿である。
3位 私のなんにもわかっちゃない / モーニング娘。'17 :2pts.
  なぜ、ライブ曲として2015年段階でこの曲が選考に回されなかったか! 考えるだけでも悔やまれる。その時だったら絶対にこの曲だけに投票したのに!(笑) それくらいこの曲の衝撃は強かった。イントロのシンセサイザーの機械音。どこか大人の女を絵にかいたような世界観。アフリカの民族音楽のような間奏とそれに合わせたかのようなパフォーマンス。小田さくら・佐藤優樹・譜久村聖による見せ場の転換。最近のモーニング娘。の魅力をぎゅっと定食に詰め込んだような安心感。これぞ「今のモーニング娘。」と大々的に宣伝できる楽曲であることは間違いない。
4位 SEXY SEXY / Juice=Juice :1.5pts.
  つんく♂作品は、曲が変わっても似たような人物像が描かれることが多いが、この曲で描かれる女性像は凄まじく達観していて、尊敬すら覚える。そこにある女性像は、病苦を乗り越えたつんく♂自身の姿のようにも感じる。曲の中では、梁川奈々美の大人と子供の境界にあり、アイドルとして一皮むけようとする瞬間に寄り添った世界観を軸に、段原瑠々の声の艶、パフォーマンスのしなやかさを際立たせ、ほかのオリジナルメンバーがそのサポートに回った格好になっているのもつんく♂作品マナーが保たれているあたりが面白かった。
5位 Loneliness Tokyo / 道重さゆみ :1pts.
  つんく♂作品といえば、やたら東京の地名が登場する作品が多いのだが、これはつんく♂自身が大阪出身であり、東京に対するコンプレックスが起因するものであることが彼によって述懐されている。この曲はモーニング娘。'16『Tokyoという片隅』によって訴えられた「東京」に対する言いおおせない不安と孤独感が、この曲では少しでも払拭していこうという意志を感じる。道重が現役メンバー時代にが到達できなかった境地に、卒業してからようやく到達できたと宣言する歌ではなかろうか。

MV部門


1位 自由な国だから / モーニング娘。'18 :3pts.
  オープニングでメンバーが円座になっている場面は、どこか高知の陰陽道くさなぎ流の祭祀のようにも見える。メンバー船員が一致団結して得体のしれない「不自由」という名の怪物と戦おうという儀式のようである。その怪物は、自ら身にまとっている学生服や、垂れ下がっている大きな紙の垂れ幕に象徴されている。最初に観た印象は、田舎の高校の演劇部のセットのようにも思えたが、メンバーが放つ鋭い視線や堂々とした佇まいから、それが全く意味を異とするものだということがわかったときは、メンバーそれぞれの演技力の高さにほとほと感心した。ハロプロの映像ではよそと異なり、映像にそこまで資金を投入できない。できないからこそできる範囲で知恵を巡らせ、メンバーの演技力を信じてやり切ったことに大いなる賛辞を与えたい。
2位 フラリ銀座 / モーニング娘。'18 :2pts.
  つんく♂の原点回帰のような歌謡曲路線。やはり、このMV抜きには語れないだろう。まるで油絵のパレットを押し広げたかのような、原色豊かな衣装。それに合わせて、テーマが銀座であるのにどこかディズニーアニメ映画のようなセット。あまりに似合い過ぎている牧野真莉愛と加賀楓の男装姿。飯窪春菜は牧野と見つめあうシーンで本気で照れてしまったとか、一日中練習したというステッキさばきにメンバーが快哉を挙げたとか、それだけメンバーも楽しんで撮影に臨んだ様子が映像でもうかがえる。途中に差し挟まれる映像は、パラマウント映画やMGM映画のシンボルマーク映像のパロディーだったりと、なかなか洒落も効いていて、何度観ても飽きない構造。お見事!
3位 きっと私は / こぶしファクトリー :1pts.
  ハロプロ史上最高傑作といえるモーニング娘。'15『青春小僧が泣いている Another Ver'』を作った、今では大河ドラマのオープニング映像なども手掛ける渋江修平監督の待ちに待った二作目。「和」のテーマを得意とする監督による、和室でのメンバーにのダンスシーンは相変わらずシュールでありながら、メンバーそれぞれのパーソナルに寄り添った丁寧な作品作りで、非常に好感が持てる。「がんばれ」メッセージを大上段に振り構える曲が多いこぶしファクトリーの曲に、つんく♂だからこそ知るメンバーそれぞれの個性を反映したこの曲の性格を十二分のリサーチしたうえでの快作だ。

推しメン部門


佐藤優樹 / モーニング娘。'18
  女優の松岡茉優、新木優子の賛辞を待つことなく、今年の佐藤優樹はまさに「覚醒」の歳だったと思わずにはいられない。お笑い芸人の柳原可奈子も「そのパフォーマンスをどこの海外の歌姫から盗んできたんだ」と言ったが、上手く歌うよりも「魂を込める」歌い方をする。ジャニス・ジョプリンもかくやというばかり。またMBS『ヤングタウン土曜日』に出演がなり、その破天荒さも爆笑問題・太田光などに知られることとなった。飯窪春菜が卒業し、10期メンバーも二人となり、なぜか石田亜佑美と佐藤優樹という『トムとジェリー』コンビが残ったわけだが、来年のモーニング娘。は、この「仲のいい喧嘩」が華やかにするだろうことは想像に難くないだろう。