楽曲部門
1位 冷たい風と片思い / モーニング娘。'15 :2.5pts.
「ENDLESS SKY」「The Vision」「Singing」とクラシカルなメロディセンスがどんどん開花していて、あれ?もしかしてこの人ホントに浪花のモーツァルトになっちゃうのかしら?と近頃思わせるつんく♂が、久々にドロップしたシャ乱Q臭強いメロディ。
しかし特筆すべきはそこではなくて、なんといってもリズム隊の気持ちよさ。ルート打ちしてるだけのシンセベースがもう、途方もなくグルーヴィー。後ノリのドラムとのコンビネーションもばっちり。ギターサンプルが入ってきたらほとんどイキかける(イチロー)。研修生のレッスン曲にしてほしい歌No.1。この難しさに年中チャレンジさせられてたら、さぞリズムに敏感になるに違いない。「セクシーキャットの演説」もむちゃくちゃ厳密なリズムで、つんく♂のこの、娘。への要求レベルの高さには舌を巻く。
2位 Next is you! / NEXT YOU :2.5pts.
エレキギター以外すべて打ち込みで構成されたいつものつんく♂サウンドだが、この鬼気迫るスピード感は紛れもなくロックのそれ。実際BPMもかなり速いが、ツーバスと聴き紛う連打ベースにこっちの心拍もつい上がる。エレピのイントロ、それを切り裂くように1小節だけ挿入されるノイジーなシンセ、8小節のリフの後に明らかに付け足された2小節、Bメロで寂しげな裏メロを弾くシンセリード、などなど、主題歌としてというより劇伴として使えるようオイシい部分をたくさん盛り込んだつんく♂のサービス精神が(珍しく??)炸裂しているのも聴きどころ。
3位 夢幻クライマックス / ℃-ute :2pts.
『誰から誰に向けての言葉なのか』が脈絡なく切り替わっていく歌詞が素晴らしい。ショックのあまり口をついて出た言葉を並べて、その錯乱ぶりそのものを供物とすることによって解散ソングたらしめるという、こんな作詞手法は初めてみた。しかも、ここまで冷静さを失って失って失ったあげくの最後の一行が、「強く生きていこうね」だなんて。まさに「望みがなくなって愛だけ残った」んだな。胸が詰まる。
今年のベストアレンジャーこと大久保薫のアレンジワークはキレまくっている。フルレングス通しての構成の完成度は「セクシーキャットの演説」のほうが上だと思うが、こちらの狂暴さには思わず息を呑む。“うるせえ!ケチつけるやつは全員のど笛かっ切るぞ!”と凄まれているかのようだ。
4位 Summer Wind / ℃-ute :2pts.
来生たかお、稲垣潤一あたりを彷彿とさせるメランコリーが秀逸。つんく♂はコスメのCMをイメージしていたらしいけど、個人的にはこれはクルマ。いずれにせよ、こんな荘重な曲をTV CMで流す余裕が、バブル期の日本にはあった。ユニゾンヴォーカルが似合うような曲じゃまったくないので、ホントは歌はソロパートリレーで通してほしかった…というのはさすがに無理な注文か。
5位 Tokyoという片隅 / モーニング娘。'16 :1pts.
ああ、こりゃ天啓が降りてきちゃったんだな、ということが否応なしに分かってしまう。どうしようもなく《アーティストの作品》で、メロディと詞とサウンドが三位一体。リメイクの余地皆無。あそこがああなっていればとか、部分を指摘することがバカらしくなるタイプの作品を享受できるのは、それが好みかそうでないかに関わらず受け手にとって幸せなことだ、としみじみ思う。ドラムフィルとかシンセノイズとかまったくなしにいきなりリズムユニゾンから入るイントロも、突然いかづちに打たれるようなイメージでグッド。
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